ジャンル |
地唄・箏曲 箏組歌 秘曲・別組 |
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作曲者 | 不詳 |
調弦 | 平調子 |
唄 |
一 おもしろの春雨や 庭の木草も潤みて 朱の玉垣ほのぼのと 開くや梅の花の香 二 東風吹かん折々は 匂ひおこせよ梅が枝 馴れし都の花盛り 春を忘れぬしるべに 三 梅は慕ひて飛び行く 桜は枯るる世の中に 心尽しの生の松 代々の奇特ぞ妙なる 四 鄙の旅寝のつれづれ いぶせき宿の挟筵 片敷く夜半の曙 心尽しのいにしへ 五 南枝北枝の花の香 色を争ふ初春の 物見車の隙なきは 天満神の宮所 六 あやなくも唐衣 織らで北野の神ぞとは 袖に持ちたる梅が枝の 匂ひに添へて知るべし |
訳詞 |
1.いい具合に春雨が降って、庭の木や草も潤んで、神域の朱塗りの玉垣の辺りでは、ほのぼのと梅の花も開いて芳香を放つであろう 2.東風が吹く折々には、その風にことづけて梅の香をおくってくれ、昔住み慣れた花盛りの都の春を忘れない知るべに 3.都の梅は主人を慕って筑紫まで飛んでいった。桜は我が身を犠牲にしてかれてしまった今、筑紫に心を尽くす生き残りの松の心意気は後世に残る奇特なことであって感嘆すべきである 4.田舎の旅寝の淋しさ、みすぼらしい宿で小さな筵に衣を片敷いて横になっていると、夜も明け初め、さまざまに昔のことが思われて、気になるこの筑紫の配所である 5.南に伸びた枝も北に伸びた枝も、花の香や花の色を競い合うように梅の花が咲く初春に、特に天満宮へは見物の車が隙間なく出て並んでいる 6.不合理にも唐衣を織ってない普通の衣を着たところで、それが北野の神だとは、袖に持っている梅の枝の匂いに自然にわかるはずだ |