ジャンル |
地唄・箏曲 箏組歌 裏組 |
---|---|
作曲者 | 三橋検校弥之一 |
調弦 | 平調子 |
唄 |
一 桜卯の花白菊の 紛ふは雪の色ながら 紛はぬ雪の白重ね 留むるは袖の梅が香 二 小野の御室のつれづれを 夢かと思ふ雪の夜の 深き心に踏み分けて 訪ひし君こそ忘られね 三 久方の 中に生ふる 桂の匂ふ花ならば 一枝誰も折りかざし 世々に伝へん月の名 四 葉月半ばの月澄みて 空飛ぶ雁の声落つる 白妙衣現なる 夢の契りぞ哀れさよ 五 花はみ吉野小初瀬よ 嵐の山もおしなへて 雲と眺めし人丸の 昔の名こそ嬉しけれ 六 世の中は物変はり 星移れども春の花 柳の糸の絶えやらで 来る年どしの頼もしき |
訳詞 |
1.桜や卯の花や白菊が咲いている様子はまるで雪景色と見まがうほどであるが、白重ねを着たような雪の中でも、白重ねの袖に炊き込めたように香る梅は紛れはしない 2.小野の庵室にお入りになって退屈していらっしゃるところに、夢かと思われるように、昔を忘れず、夜雪を踏み分けて訪ねていかれた君こそ忘れられない 3.月世界に生えている桂の匂いがする花ならば、誰でも一枝折って頭に飾り、桂を折るの例えのように、立身して、月のように高く上がった名を後世に残したいものだ 4.八月の十五夜の月が澄み、空飛ぶ雁の声が間近に聞こえてくるかと思えば、白妙の衣を打つ砧の音も遠音さすような所で現実に結んだ契りは、夢のようにはかなかった契りであったことが思い出されて悲しくなる 5.桜の名所といえば吉野山に長谷に嵐山であるが、どれもすべて、人麻呂の詠んだように雲のようで、昔の歌聖の名が偲ばれて嬉しい 6.世の中は移り変わり、年も移っていくが、春の花や柳の糸は、いつまでも変わりなく美しい姿を見せてくれるので、毎年来る年が頼もしい |