ジャンル |
地唄・箏曲 手事物 |
---|---|
作曲者 | 松浦検校 |
作詞 | 南枝 |
調弦 | 三絃: 二上り |
唄 |
君が住む、あたりの草に宿しても、 [合の手] 見せばや袖にあまる白露、 [合の手] 晩稲の田をも刈りし穂に、色づく秋の群鳥を、 苧生の浦船漕ぎつれて、あれあれ見よや余所の船にも、 [手事] 打つ鼓しどろに声立てて、日を暮し夜を明かし、 思ひ乱るる我こころ。 [合の手] 哀れとだにもいふ人の、涙の数そへて、 賤しき業を忍び音に、笛と鼓の声諸ともに、 追ひつ追はれつ幾度か、鳥追船の浮きつ沈みつ。 |
訳詞 |
君の住むあたりの草に宿をとっても見せたく思う、袖に余った涙を。 おくての田を刈った稲穂に色づいたところへ集った秋の群鳥を追う苧生の浦船を漕ぎ行くに連れて、あれこれ見なさい余所の船でも、鳥追いのために打つ鼓、目茶に打ち鳴らし、日を暮らし、夜を明かし、思い乱れる我が心である。 空に響く鳴子に驚く村雀は稲葉の雲のように飛び去り、自分も行方のわからない境涯を気の毒だと言ってくれる人もなく、涙だけが一層ふえて、大名の妻子が賤しい鳥追いの業に忍びこらえて鳴らす笛と鼓、追いつ追われつ幾度か、鳥追船の浮き沈みの辛い思いである。 |
補足 |
二上り手事物。 歌詞は謡曲『鳥追舟』の中間部を応用したもの。 1794年『大成糸の節』に歌詞が初出。 津山検校作曲の『神楽』と同時演奏できるように意図して作られている。 |