ジャンル |
地唄・箏曲 箏組歌 表組 |
---|---|
別名 | 葵の曲・雪の朝 |
作曲者 | 八橋検校城談 |
調弦 | 平調子 |
唄 |
一 雪の晨の嵐は 梢の花の散る風情 名残惜しきはとにかくに 待ち得し君の帰るさ 二 浅ましや我が身は 雲井の雁に夕霧の 貶しめられし思ひをば いつの世にかは忘れん 三 まどろめば面影 しげしげと短夜に ほととぎす訪れて 初音に夢は覚めけり 四 眺むればいとどだに 恋しき人を恋しきに 曇らば曇れ秋の夜の 月に恨みはあらじな 五 峰の嵐に通ふか 谷の水の流れか 寝覚めに聞きし松風は 箏の音に違はじ 六 葵の上の時めきは 賀茂の物見の折からに 車争ひ情なきは 深き恨みなるべし |
訳詞 |
1.雪の降った翌朝に吹く嵐は、梢の雪を落花のように吹き散らしているような風情がある。名残惜しいのは、とにかく、待ちに待ってやっと訪れてきた恋人が帰っていくときの気持ちと同じである 2.何と浅ましい私のこの身か、夕霧が雲井の雁に見下げられたあの思い、いつの世までも忘れられようか 3.うとうとと眠ると恋しい人の面影が見えた。良く見ようとしても夏は夜が短く、ほととぎすが早くも夜明けの初鳴きをしたので、夢が覚めてしまった 4.秋の月を眺めるともなく眺めて物思いに耽ると、ただでさえ恋しい人がいっそう恋しくなる。いっそ曇るなら曇ればよい。秋の夜の月に恨みがあるわけではないが 5.眠りから覚めて聞いた松風と思える音は、あるいは峰の嵐か谷の水音とも聞こえるが、やはり箏の音に違いないのであろう 6.葵上のときめいていた、あの賀茂の物見の車争いの非常なやり方が、御息所の深い恨みとなったのも当然である |