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嵯峨の秋
[サガノアキ]

ジャンル 地唄・箏曲
明治新曲
作曲者 菊末勾当
調弦 箏高音:想夫恋調子(乃木調子から二・七絃を半音下げる)
箏低音:高音を全体に五度下げる
  さらでだに、ものの淋しき名にたてる、嵯峨のあたりの秋の暮、
  月は隈なき柴の戸に、忍びて漏らす箏の音は、峯の嵐か松風か、
  尋ぬる人のすさびかや。駒をとどめて聞く時は、
  つま音しるき想夫恋そうふれん、つま音しるき想夫恋。
訳詞 そうでなくとも物寂しいと聞いている嵯峨野は、ましてや夕暮、一段と荒涼たる気配が濃い。明日に照らし出された仮住いの柴の戸あたりから、秘やかに聞こえる琴の音は、山の峰を吹く嵐の音かまたは松に当たる風の音か、それとも尋ねる人が弾いている琴の音であろうか。駒をとどめて何の曲であろうかと耳を澄ませば、爪音もあきらかに想夫恋という曲であった。
補足 手事物形式による高低二部合奏物の明治新曲。
平家物語の小督の巻に取材、小督が想夫恋の曲を奏する場面を描いたもの。
手事は三段。
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