ジャンル |
地唄・箏曲 山田流 |
---|---|
作曲者 | 不詳 |
作詞 | 不詳 |
調弦 |
箏:平調子 三絃:二上り |
唄 |
我がいほは、都のたつみしかぞすむ うつふしぞめの麻衣、色というふ字はどうしたものか、 始め終りのさだかには、月のかほばせ見せぬも、 うしや、雲の上なる三十一文字の、歌にのみきく恋の種、 しげりやすうてそのくせに、秋の初花露よりもろく、 枯れにし後のおとづれは、谷の蛍か沖辺ゆく、 あまのいさりの思ひをよそに、楽な夜毎のひとりねを、 世をうぢ山と人はいふなり。 |
訳詞 |
わが住居は都の南東にあたり、鹿のすむ宇治山にこうして住んでいる。そしてうつぶし色に染めた僧侶の麻衣、色といったのは僧侶としては不似合いのもので、どうしたものか。 始め終りのはっきりした月の面を見せないのは憂い辛いことであるよ。雲上したといわれる歌人の喜撰法師は三十一字の和歌の上だけにみられる恋の種、繁りやすく親しくなりやすく、そのくせ秋の初花は露の儚いよりも一層脆く枯れる様に離れて、後の音信は谷の蛍か沖を行く漁夫のいざり火か燃える思いをよそにして、安楽に毎夜の独り寝を世人は憂く辛いであろう宇治山での住居であろうと誤って言うのである。 |
補足 |
山田流箏曲。初学曲。 喜撰法師を主題とし、法師にまつわる伝説やその作になる和歌を読み込む。「小野の山」と題した替歌もある。 この曲に対して西行法師を扱った初学曲『西行』があり、両曲とも同拍子数で、「曲違い打合せ」として同時演奏が可能。 なお、地歌にも「さめ果てし夢も新茶の」の歌いだしの同名曲があった。 |