ジャンル |
地唄・箏曲 箏組歌 裏組 |
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別名 | 手飼の曲・柏木の曲 |
作曲者 | 八橋検校城談 |
調弦 | 平調子 |
唄 |
一 数ならぬ身にはただ 思ひもなくてあれかし 人並み並みの薄衣 袖の涙ぞ悲しき 二 憧れて思ひ寝の 枕に交はす面影 それかとて語らんと 思へば夢は覚めけり 三 白雪の深雪の 積る年は経るとも 飽くまじやもろともに 寝乱れ髪の顔ばせ 四 引く人はそれそれ 数多あれども妻琴の もとの心変はらずば 琴柱に落ちよ秋風 五 柏木の衛門の 鞠をとんと蹴たれば 鞠は枝に止まりければ 梅ははらりほろりと 六 さりとては情なや 引かふる君が袂の あやにくに靡かぬは 手飼ひの虎の引き綱 |
訳詞 |
1.物の数にも入らない我が身に、物思いなどなくても良いのだが、それでも人並みに恋もする自分は、粗末な薄い衣をまとっているものの、その衣の薄さよりもっと薄情なあの人への思いで、涙に袖を濡らしている 2.思い焦がれて寝た夜は、夢の中でその人と枕を交わすことが出来るが、その面影に語りかけようとすると、夢ははかなく覚めてしまう 3.白雪が深く積る年が重なっても飽くことが無いように、齢を重ねても心通う人とは、お互いに寝乱れた髪の顔を見合わせても決して飽きない 4.箏を弾く人がたくさんいるように、あなたを誘う人もたくさんいるだろうが、初めの心が変わらずにあるなら、秋風が琴柱に落ちて変わりのない音を奏でてくれるように、心変わりしてくれるな 5.柏木の衛門が鞠をとんと蹴ったら梅の枝に引っかかってしまって、花がはらりほろりと散りかかった 6.それにしてもなんとつれないことか、私があなたの袖を引いても私のほうになびいてくれないのは、あなたの飼っている猫につけている綱が意のままにならないのと同じである |