ジャンル |
地唄・箏曲 手事物 |
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作曲者 | 菊岡検校 箏手付け:八重崎検校 |
作詞 | 酒井某 |
調弦 |
三絃:本調子 箏:半雲井調子-平調子-半雲井調子 |
唄 |
焦がれこがれて逢瀬は苦労、楽しむなかに何のその、 人目堤のあらばこそ、嬉しい世界に住み馴れて、 流れ渡りの舟の内、それも浮世に帰るにも、 しかじと鳴きてほととぎす。 行衛いづくと白浪の、夜の筵に思ひ寝の、 夢をうつつに驚かす、風は涼しき楫枕。 |
訳詞 |
焦がれ焦がれる思いに逢瀬は苦労する。あって楽しいその仲は、人目があろうが少しも気にはしない。 恋愛の自由なこの世界に住み慣れて、舟から舟へと浦々を流れ渡って日を暮らす。まともな浮世に帰るにしかじとほととぎすは鳴いてはくれるが、さりとて、われながら自分のゆく目標もわからず、夜は筵の中で思う人の思い出を胸に寝入るけれども、その楽しい夢路を現実世界に引き戻す無慈悲な川風に、さめては舟の上で寝ていた不安定のわが身を見出す悲しい身の上である。 |
補足 |
京風手事物。 流れ渡りの舟に事寄せて、寄る辺ない遊女の恋の心情を歌ったもの。 手事は中チラシを挟んで、二段からなり、チラシが付く。 |