ジャンル |
地唄・箏曲 箏組歌 中許(中組) |
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作曲者 | 三橋検校 |
調弦 |
平調子 第三歌から 中空調子 |
唄 |
序 物の哀はこれよりぞ 知らざらましや知らざらめ 時につけつつ移ろふ心 いづれか思の種ならん 一 糸縒りかけし緑こそ 寝乱れ髪の面影 詠めせしまに色も香も 移ろひやすき人心 二 薄き情けを折り延へて いとはかなくも泣き暮し 包むに余る胸の火に 夜すがら身をや焦すらん 三 年ごとに逢ふとても 寝る夜少なき契りかな 嘆けとてやは照り添ふる 影にぞ千ぢの悲しき 四 小笹が上を迸るは 別れの袖の白玉 思ひ古屋の軒に積る 恨みも解けて忍び音 |
訳詞 |
序.人の世の情けは、恋をすることによって知ることが出来ないのか、いやできる。四季の移り変わりに応じて感じる心も、いずれ物思いの種となるものである 1.柳の細枝を縒りかけた緑は、美しい人の寝乱れ髪のように見えるが、そんな美しい人の面影も、長雨が続いて長雨物忌みをしていて、ぼんやりと物思いに耽っている間に、色も香も失せてしまった。それに対して人の心も気持ちも変わりやすいものであるよ 2.ほんのわずかの間の契りでもいつまでも忘れがたく、薄い情けを嘆き、昼は蝉のように泣き暮らし、夜は包んでも余る胸の火に、蛍のように身を焦がし苦しむであろう 3.毎年逢っても、夜を共にすることの少ない契りであるよ、嘆けといって月は照り添うが、その月影に色々と悲しい思いに耽らされる 4.小笹の上に飛び散るのは、お別れのときに袖を流す涙の白玉である。しかし、人を思うのも長らく経てば、古屋の軒に降り積もった雪ほどの日頃の恨みも雪とともに解けて、人知れず忍び泣きをしているだけとなる |