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空蝉
[ウツセミ]

ジャンル	地唄・箏曲 箏組歌 中許（中組）
作曲者	北島検校
調弦	平調子
唄	一　空蝉（うつせみ）の　あるかと見（み）れど　面影（おもかげ）の　影（かげ）もあやな 　　香（か）を留（と）めし小夜衣（さよごろも）　蛻（もぬ）けし人（ひと）ぞ恋（こい）しき 二　尋（たず）ねてもなかなかに　あはでの森（もり）の逢（あ）はでのみ 　　情（つれ）なきものは命（いのち）にて　独（ひと）り胸（むね）をや焦（こ）がすらん 三　夜々（よるよる）にも我（わ）が袂（たもと）　濡（ぬ）れつつ増（ま）さる恋心（こいごころ） 　　人（ひと）こそ知（し）らね忘（わす）られぬ　身（み）の程（ほど）いかで侘（わ）びまし 四　恋（こい）しゆかしと情（つれ）なくも　甲斐（かい）なき世（よ）にも住吉（すみよし）の 　　松（まつ）は我（わ）が身（み）の思（おも）ひにて　逢（あ）はでや年（とし）を経（ふ）るらん 五　思（おも）ひ重（かさ）ねて年月（としつき）を　経（ふ）れば昔（むかし）の懐（なつか）しく 　　思（おも）ひ出（い）でたる今宵（こよい）しも　涙（なみだ）に雨（あめ）や誘（さそ）ふらん 六　とにかくにとにかくに　真実（まこと）のあらば荒磯（あらいそ）の 　　波（なみ）の彼方（あまた）に隔（へだ）つとも　寄（よ）る辺（べ）のなどかなからん
訳詞	１．空蝉がいるかと思ったが空蝉という言葉のようにもぬけの殻で、影も形も見えないのは、理不尽である。脱ぎ捨てた衣に残っている香りは逃げ出した人への恋しさを余計につのらせる ２．いくら訪ねてもあわでの森ではないが、なかなか逢えないばかりだ。いっそ命が燃え尽きてしまえばよいものを、情けないことに、ただ独りで胸を焦がしているだけである ３．夜な夜な涙に袖が濡れ増さるほど源氏の事を思う気持ちが増すのだが、人は知らないだろうが、源氏を忘れかねるこの身をどのように託つべきか ４．お互いに思いながら、逢うわけには行かなかった仕方のない世の中に住んでいるが、いつかは一緒に住むことが出来ようかと待っているのは、私の心の中だけの気持ちで、結局は会うこともなく年をとってしまうのであろうか ５．恋しい思いを重ねながら年月が経てば、昔のことが懐かしく思い出されて、今宵はことに涙が溢れ、雨を呼ぶほどである ６．とにかくお互いに真実の気持ちがあれば、どんなに荒れた波に隔てられていても、船の寄る岸辺が必ずあるように、いつかは寄り添うことがないはずはない

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