ジャンル |
地唄・箏曲 手事物 |
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作曲者 | 幾山検校 |
唄 |
琴の音に七年すぎし、夜の雨、 軒より落つる面白さ、知らでくやしと唐の。 人の言ひけん言の葉を。 思ひ出づればうべなれや、月雪花の移り香に。 あさくしまめや我が袖に、ゆかしく。 残る、磯の春。その越し方の慕はるる、 おなじ心にならひつつ。 世におもしろき糸竹の、しらべを友として遊ばん。 |
訳詞 | 琴の音に七年間蜀の錦官城で、宴会に日々を暮らしたことを思い出す。夜の雨が軒をめぐって落ちる雫の音は琴の音の様で面白い。こうした静寂な風雅な境地のあったことを知らなかったのは悔しいことであると陸放翁がうたった詩を思い出せば、それももっともなことであるよ。月雪花の移り香に対しては、我袖に浅く染ましてよいものか、よいかげんに考えてはならない。心惹かれて残る磯の春の自然の風情よ、その過ぎた昔の磯の春に慕った頃が懐かしく、そうした月雪花の風雅な心にならって、面白い音楽を友として楽しみましょう。 |
補足 |
京風手事物。 「前唄」・「マクラ・手事・チラシ」・「終唄」の三段からなっている。 |