ジャンル |
地唄・箏曲 山田流 |
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作曲者 | 山登松和 |
調弦 |
箏:平調子 三絃:二上り |
唄 |
われも昔はますらをの、真弓、槻弓年をへて、 ひきたがへたる朝夕は、命なりけり旅衣、 苔の衣に身を染めかへて、心の塵を袖はらふ、 やぼな世界にいとしごの、いとしかはいは昔の事よ、 のう、よしの山、よしの山、こぞの栞の道かへて、 まだ見ぬ花のいろいろを、たづねたづねて歌枕、 筆のすさびの墨染ざくら、うつろふ春の花の顔、 やせる姿に笠きたなりを、水の鏡にかげとめて、 しばし立ち寄る柳かげ。 |
訳詞 |
自分はもともと武士であったが、弓には真弓、槻弓と、いろいろあるように、いろいろ辛い思いをして年を経て、朝となく夕となく旅をするようになった。法衣を纏い、煩悩を袖で払い清め、塵の世でのわが愛児に対する可愛いとか、いとしいというのは俗人であったときのこと。 吉野山の去年訪ねた後は再び訪ねないで、今年は道を変えて、まだ見ない花を訪ね、和歌を詠み、筆なぐさみの墨染桜を詠むのである。 若かった時の春の花の顔も何時しか色が褪せて、笠をかぶったやせ姿を水の鏡に映してみるため、ほんの暫時と柳の影の清水に立ち止まったが、つい思いに耽って長くなった。 |
補足 |
山田流箏曲。 西行法師の和歌を綴り合せ、北面の武士から法師となり、吉野の花を愛でた歌人になったことを歌っている内容。 |