ジャンル |
地唄・箏曲 箏組歌 表組 |
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別名 | 花宴曲 |
作曲者 | 石塚検校りう一 |
調弦 | 平調子 |
唄 |
一 幾春をここになほ 御階の桜色増さり 雲井の花は久方の 空吹く風の及ばじ 二 雲の上人挿頭して 色を争ふ紫の 袖の薫りはうち映ゆる 大内山の夕づく日 三 夕暮の薄霞 誰が鳴らす糸竹 思ひ余る身にはただ よその調べも懐し 四 梅壷のあたりより 小簾の隙に洩れ来る 風の薫りは宵の間も 闇はいとどあやなし 五 弘徽殿の細殿に 佇むは誰々 朧月夜の尚侍のかみ 光源氏の大将 六 いとどなほ深き夜に 哀れを知るも入る月の 朧げならぬ契りこそ 今身に思ひ知らるれ |
訳詞 |
1.紫辰殿の左近の桜が、春が来るたびにその色の美しさを増して咲き誇るのは、高貴なところにある花だから、空吹く風も力及ばず、散らすことが出来ないのだろう 2.殿上人が花を頭に飾って、その花の色を競っている。紫色の着物の袖は、そこに薫き込めた香の薫りと、あでやかな紫の色彩とが宮中の夕陽に美しく照り輝き、栄えて見える 3.夕暮の薄霞の中で誰が演奏しているのか、雅やかな管弦の調べが聞こえてくる。物思いをしている身には、他の人の調べる音楽でも、懐かしく趣深く感じられる 4.梅壷の辺りから、吹く風に乗って、御簾の隙間から好い香りが漂ってくるが、辺りは宵の闇で見えなくて不合理だ 5.弘徽殿の細殿にたたずんでいる人は誰だろう。それは朧月夜の内侍の督と光源氏の大将 6.夜更けの情趣を一層深く知るようになったのは、あの朧月夜の内侍との出会いからであるが、それは山の端に入る朧月のような朧げな契りでは決してなかったと、今こうして須磨に謫居している身には、しみじみと思い知られるのである |