古典曲検索

さらし
[サラシ]

ジャンル 地唄・箏曲
手事物
作曲者 深草検校
作詞 北沢勾当
調弦 三絃:本調子
箏:雲井調子
一 槇の島には、晒す麻布あさぬのしず仕業しわざは、宇治川の、
  浪か雪かと白妙に、いざ立ちいでて布晒す。
  かささぎの渡せる橋の霜よりも、晒せる布に白味あり候。
  のうのう山が見え候。朝日山に、霞たな引く景色は、
  たとへ駿河の富士も物かは、富士も物かは。

二 小島が崎に寄る波に、寄る波に、月の光を映さばや、
  映さばや。見わたせば、見わたせば、伏見、竹田に淀、
  鳥羽もいづれ劣らぬ名所かな。

三 立つ波は、たつ波は、瀬々ぜぜ網代あじろへられて、
  流るる水を堰き止めよ、流るる水を堰き止めよ。
  所がらとてな、所がらとてな。
  布を手ごとに、槇の里人打ち連れて、
  戻らうやれ、賊が家へ。
訳詞 1.槇の島の麻布を晒す貧しい家業の人たちは、宇治川の河原に行って麻布を晒す。宇治川の川水に晒した布は波か雪かと疑うぐらい白く、カササギが渡した橋に置く霜よりさらに白い。あれあれ山が見える。朝日山に霞のたなびく景色は、駿河の富士山の美しさにも決して劣らない。

2.小島が崎によせる波に月の光を映してみたいものだ。見わたせば、伏見、竹田、淀、鳥羽などいづれ劣らぬ名所である。

立つ波は川の瀬に仕掛けられた網代に遮られて、布を晒すに都合のよいように流れる水を堰き止めてくれ。場所がらとて一日の仕事が終われば、島の人々は布を手ごとに持って、打ち連れ立って貧しい我が家に帰ってゆく。
補足 三絃手事物。
宇治川の布ざらしを描写した曲。北沢勾当作詞作曲の「さらし(古さらし)」を発展させたもの。
最後の合の手を手事とする。 手事や三歌目の合の手が特に有名で、この手を取り入れたものに、 『玉川』・山田流箏曲『春日詣』・『六玉川(箏組歌とは別曲)』・長唄『越後獅子』などがあり、布ざらしの描写に頻用。
一覧に戻る