ジャンル |
地唄・箏曲 山田流 |
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作曲者 | 山田検校 |
作詞 | 横田袋翁 |
調弦 | 箏:平調子 |
唄 |
一 梅が香も、みすの匂ひにふきまがひ、 春のおとどにはるたてる、 おまえのさまいふことのはもおよばじ。 二 あふみのや、あふみのや、名だかき山もよそならぬ、 春の鏡にむかひゐて、変らぬかげをうつさむ。 三 けふは子の日なりけり、千歳の春をいはふとて、 そのふの小松引き遊ぶ、人の心ぞのどけき。 四 めづらしや、かげ高き花をねぐらの鶯、 すだちし松のねにたてて、谷のふるすをこととふは、 五 花の香さそふゆふ風、のどやかに吹きたるに、 梅もやうやうひもときて、このとのあそぶおもしろき。 六 をとこだうかの明け方、水駅にもあらじな、 わたをかつぎわたして万歳楽をうたへり。 |
訳詞 |
1.梅の香も風に吹き送られ、御簾の中の香と混同され、正月の殿に訪れる新春の前栽や殿の中の祝儀の情緒の華やかさは言葉では表現されないものである。 2.近江国の名高い山も他でもない鏡山。その山の名の春の池の鏡に向って、千年も変らず栄える影を映してみよう。 3.今日は子の日であるよ。千年の栄える春を祝うというので、前栽の小松を引いて遊ぶ人の心は長閑である。 4.珍しいことである。影の高い花のような東宮妃という高い位を巣にした鶯が巣立ったもとの松の根に音を立てて谷の古巣を訪れることは殊勝なことである。 5.花の香をただよわせてくる風は長閑に吹いてきたが、梅もようやくほころびはじめ、この殿での遊びは面白いことであるよ。 6.男踏唄の夜明方水駅でもあるまいな、綿の花をつけて万歳楽を歌った。 |
補足 |
山田流箏曲の箏組歌。奥許。 『源氏物語』の『初音』の巻に取材し、源氏六条院殿における新年ののどかな生活のさまを象徴的にまとめて六歌に配した。 基本的な組歌形式の原則を踏まえ、歌詞の時間的推移に伴って、かけ爪などの類型旋律の用い方はしだいに破格へと向う。 終止旋律も第一・三歌のみが定型。 山田流箏曲として作られた唯一の組歌。 |