ジャンル |
地唄・箏曲 山田流 |
---|---|
作曲者 | 山田検校 |
作詞 | 不詳 |
調弦 |
箏:平調子 三絃:二上り |
唄 |
誰に靡くかいつしかと、ひもどきそむる萩が花、 錦のとこにおく露の、おもひ乱れて秋の夜の、 長き夜もすがら徒に、雲居の月のかげふけて、 とふに辛さのまさるとも、知らでやすぐる秋の風、 身にしむ頃はなれも亦、しのびかねてやさをしかの、 声より落つる涙さへ、なほ萩が枝にかかるらし、 とにもかくにもおもひあまり、下葉も今は色に出で、 こがると知らばたちこむる、霧のまがきのへだてなく、 千秋をかけて紫の、ゆかり忘るな萩が花妻。 |
訳詞 |
誰に靡く気がいつのまに咲き初めた萩の花、錦の床に露が置かれ、思い乱れて露の涙を流す。 秋の長い夜、終夜待っても甲斐がなく、空の月光は夜更けて思うに辛さが増すばかりである。 人の気持ちも知らないように吹き過ぎる秋風が身に染む頃は、お前もまた忍びかねて鳴く鹿の声から落ちる涙さえ、萩の枝に降りそそぐことであろう。 とにかく思い余って下葉も今は紅く色に出て、慕い焦がれるのである。 こうして焦がれるとなれば胸に霧が立ち込めてそれによる垣根が互いに隔てになろうとも、隔てることなく千秋をかけて紫の縁も深く忘れることなくいつまでも愛し合おうよ我妻の萩の花よ。 |
補足 |
山田流箏曲。古曲。(中歌曲とも) 花妻の異名をもつ萩の花を主題として、花を恋うる鹿に寄せて恋の心を歌ったもの。 メリヤス物ともいう。 |