古典曲検索

新浮舟
[シンウキフネ]

ジャンル 地唄・箏曲
手事物
作曲者 松浦検校 箏手付け:八重崎検校 三絃替手:富崎春昇
作詞 不詳
調弦 三絃: 二上り
箏: 平調子 - 半雲井調子 - 平調子
  まめ人の心のかほり忘れねど、色香もあやに咲く花の、
  仇し匂ひにほだされて、つつましき名もたちばなや、
  小島が崎に誓ひてし、その浮舟の行方さへ、
  いさ白波の音すごき、身も宇治川の藻屑とは、
  なりも果てなで世の中の、夢の渡りの浮橋を、
  たどりながらも契りはあれど、すずしき道に入らんとて、
  うつつにかへす小野の山里。
訳詞 薫大将の真実の溢れる厚意は忘れたのではないが、色と香が織り成すような美丈夫、匂宮の熱情にほだされて、密に橘の小島に遊んで歌のやり取りとしたことがある。そのときのお互いの誓いも、小島に遊んだときの舟が宇治川の行方知れない彼方に押し流されてしまったように、すべては失われた。死を決して宇治川に投身しようとしたが、それも果たすことも出来ず、夢のような憂きわが道を、遥けくもようやくここまで辿り着いた。仮住居の小野の里には、薫の君や京より風の便りがないではないが、今は仏門に帰依して救われたいと願うばかりである。しかし、変転極まりなかった過去を、今、この侘び住居の小野の里にあって静かに思い起こせば、昨日のように生々しく胸を打つ。
補足 京風手事物。
箏組歌の『浮舟』と区別して新を冠する。
源氏物語の宇治十帖の浮舟物語を簡潔にまとめたもの。 手事は本手事-チラシとなりチラシの一部は『里の暁』、『若菜』のチラシと合う。
一覧に戻る