ジャンル |
地唄・箏曲 手事物 |
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作曲者 | 菊岡検校 箏手付け:八重崎検校 |
作詞 | 三井次郎右衛門高英(後楽園明居) |
調弦 |
箏:半雲井調子-平調子-半雲井調子-平調子 三絃:本調子-二上り |
唄 |
思ふことあればこそ、ねぬ初雁の、 夜渡る声も寒からで、空に立つなや久方の、 月にや影をみだすらん。 露しんしんとして、まくづに虫の裏ねさへ、 ただ松虫の訪れも、尾花が秋を招くやら、 誘はば越えんせきもうし、 そらねやつとうよはのくたかけ。 |
訳詞 |
評判の男に惚れると、じれったい思いに駆られる。言いたいことがあればこそ、寝もやらず、初雁の渡る夕べ、しのびよる秋の寒さも忘れて、月を見て物思いに耽っているものを、初雁は月の光をさえぎらないでおくれ。 夜露に濡れた夜は更けてゆく。訪れてくれるという約束を、今はただ待っているよりほかに仕方がないが、男心と秋の空のたとえもあり、二人だけのしんみりした機会があれば、愛情の程が確かめられるものを、誘ってくれるなら、越え難い関をも越えてゆくものを。夜半に鳴く鶏の声に、明け方が来たのかと驚いて帰ってゆく男。「嘘つき鶏め」と後で悔しがるようなことがなければなぁ。 |
補足 |
京風手事物。 前歌・手事・後歌の構成て、手事はチラシ付き。 桂男とは、中国伝説による月世界の仙人で、転じて美男を指す。 また、目に見えて手に取ることの出来ない例え、或いは女が思いを寄せても、恋の叶わない男を指す。 |