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楓の花
[カエデノハナ]

ジャンル 地唄・箏曲
明治新曲
作曲者 松坂春栄
作詞 尾崎宍夫
調弦 箏高音:六上り調子
箏低音:四九上り平調子
  花の名残りも嵐山、梢々の浅緑、松吹く風にははらはらと、
  散るは楓の花ならん。井堰を登る若鮎の、さばしる水のみごもりに、
  鳴くや河鹿の声すめる、大堰の岸ぞなつかしき。
  川上遠くほととぎす、しのぶ初音に憧れて、舟さし登し見に行かん。
  戸無瀬の奥の岩つつじ。
訳詞 桜の花の名残りをとどめている嵐山の、木々の梢は浅緑に色づき、初夏の訪れを告げている。松吹く風にはらはらと散る、花楓の花であろう。川を止めた堰を登る若鮎が水の中をすばやく走っており、河原に河鹿が澄んだ声で鳴いている。ああ、大堰川の岸はなつかしい。川上の遠くの方でかすかにほととぎすの初音が聞こえた。その声を慕い、舟に棹さしてのぼって行こう。戸無瀬の奥には紅の鮮やかな岩つつじが咲いていることであろう。
補足 手事物形式による高低二部合奏物の明治新曲。
京都嵐山の初夏の風物を歌ったもの。京風手事の伝統に基づく曲。手事は、前弾(序・マクラとも)・前チラシ・手事・チラシ。
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