ジャンル |
地唄・箏曲 箏組歌 表組 |
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別名 | 東雲の曲・朝顔の曲 |
作曲者 | 八橋検校城談 |
調弦 | 平調子 |
唄 |
一 恨めしや我が縁 薄雪の契りか 消えにし人の形見とて 涙ばかりや残るらん 二 比翼連理の語らひも 変れば変る世の慣らひ さりとては恨むまじや 昔は情けありしを 三 若紫を手に摘みて 深き心の色増す 長き契りを結びしも 草の由縁と知るべし 四 東雲の籬に 露を含む朝顔 玉の鬘たをやかに かかるや花の面影 五 世々の人の眺めし 月は真実の形見ぞと 思へば思へば 涙玉を貫く 六 吉野川の花筏 棹さす隙もあらいな 岩波高き山風 四方に散らす花の香 |
訳詞 |
1.思えば恨めしい縁である。あの人との契りは、まるではかなく消える薄雪のようだ。今は亡き人の形見として、このように涙だけが残るのだろうか 2.比翼連理のように仲良く語り合った間柄であったが、こうも変わるのが世の慣らいなのであろうか。しかしながら、恨んだりはしまい。昔は愛情深い恋仲であったのだから 3.若草のような紫の上を、若い紫草を摘むように家に連れてきてそばに置けば、深い由縁を現す紫の色も増し、やがて末永い契りを結ぶことになったのも、藤と紫草による縁のつながりであったことがわかる 4.明け方の垣根には露を含んだ朝顔が咲き、しなやかな鬘草が髪にかかっている美しい人の俤をみるようだ 5.世々の人々が眺めて物思いに耽った月は、あの方の形見かと思うと胸が一杯になって、涙が次々に、あたかも玉に糸を通して連ねたように溢れてくる 6.桜の名所の吉野川は、花が一面に散って、まるで筏のようであり、棹をさす隙間もないほどである。岩波を高く上げて吹く春風は、四方に花の香りを散らしている |