ジャンル |
地唄・箏曲 端唄物 |
---|---|
作曲者 | 伊勢屋三保 |
作詞 | 横井也有 |
調弦 | 本調子 |
唄 |
世の中にすぐれて花は吉野山。紅葉は龍田、 茶は宇治の、都の巽、それよりも、廓は都の未申。 数寄とは誰が名に立てし。濃茶の色の深緑。 松の位にくらべては、圍といふは低けれど、 情けは同じ床飾り、飾らぬまこと明し合ふ、 間夫や人目の中くぐり、中立いらぬ口切と、 後は浮名の下地窓、影洩る月のさしつけて、 それとはいはねど世の人の、口に猿戸も立てられず、 逢ふて立つ名が立つ名のうちか、 逢わで焦るる池田炭、炭を雪かといふたが無理か、 その白炭を雪とみて、雪にはあらで霰灰、 砕けて物を思ふ夜は、夢さへろくに水こぼし、 水差す人はふはふはと、乗るは三つ葉の軽はづみ、 軽いはいやと飛び石の、さわらぬ胸の裏表、 帛紗さばけぬ心から、聞けば思惑違ひ棚、 逢ふてどうして香合の、柄杓の竹は直ぐなれど、 そちは茶杓のゆがみ文字、口舌に解けし茶筅髪、 憎い頭の鉢叩き、瓢箪ならぬ炭取の、 瓢は花の夕顔の、それは棗の黄昏に、 五条あたりや四畳半、よしや気長に待合ひし、 茶臼の廻る月と日の、有らば花咲く花いけに、 離れぬ火箸寄り添ひて、憂さも話もはづむかし、 昔ばなしの爺婆と、なるまで釜の中さめず、 縁は鎖の末長く、千代萬代もえ。 |
補足 |
本調子端唄。 伊勢音頭の詞章を原拠として茶の湯の用語を綴り、男女の仲が末永く続くことを願ったもの。これを縮約して手事を補ったものが、『茶音頭』。 |