ジャンル |
地唄・箏曲 手事物 |
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作曲者 | 菊岡検校 箏手付け:松野検校 |
作詞 | 宮腰夢蝶 |
調弦 |
三絃: 二上り 箏: 平調子 |
唄 |
夢が浮世か浮世が夢か。 夢てふ廓に住みながら、人目は恋の思ひ川、 嘘か情も唯だ口先で、一夜流れの妹瀬の川を、 その水くさき心から、よその香りを衿袖口に、 つけて通へばなんのまあ、 可愛い可愛いの鳥の声に、 さめてくやしきままの川。 |
訳詞 |
この世の中は夢のようなものであろうか、あるいは夢のようなものがこの世の中であるのか。 世間では恋愛の自由な、この遊廓のことを夢の世界といっている。その遊廓に住み、そこに遊びに来る男と、人目には恋愛のように見えても、実は男たちの人情というようなものは、嘘も方便、ただ口先だけのものである。遊びに来る男達は、どうせ一夜妻だという真実のない心から、よその女の香りを衿や袖口に付けてやってきても、何と言うことであろう、そ知らぬ顔で可愛い可愛いといってくれるが、それは明け方になくカラスの声のようなものだ。愚かにもそれを真に受けて、後でそれがわかって悔し涙にくれる。どうせなるようにしかならない、流れるままに行くほかはない世の中だ。 |
補足 |
京風手事物。 思ひ川、妹背の川、儘の川とならべ、その縁語を綴って遊女の恋を歌う。 歌詞の中に作詞者の名が詠み込まれ、冒頭部分が義太夫節の「壷坂霊験記」の「沢市内の段」に用いられることでも有名。 |