ジャンル |
地唄・箏曲 山田流 |
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作曲者 | 山登検校 |
調弦 |
箏:雲井調子 三絃:本調子-三下り |
唄 |
こと花の、おほかる野べの春秋を、 へだてて今は中ぞらや、てる日に匂ふからやまと、 花のにしきのとこなつは、げにたぐひなきよそほひ、 くれないゐの、こぞめの色におきわたす、 あしたの露の玉すだれ、かけてぞいのる神がきの、 しるしなるらむひめゆりも、ひもときそめてなびきつつ、 むつれもつるる手枕に、かをりのこして名はたち花の、 かげにやどるかほととぎす、 あけてわかるるちぎりはほんに、 すゑひさかたの雲のそでに、ひく手もしげきあやめ草、 ことによしある言の葉の、かたりもつきぬははこ草、 かれぬさかえをうつしてうゑて、さかりひさしき、 さかりひさしき宿の撫子。 |
訳詞 |
異なった花の多い野原の春秋を隔てて、今は中空に照る日を受けて匂う支那や日本の花の錦のようなとこなつは本当に類例のない装いである。 紅色に濃く染めて、その上においた朝露の玉で飾った簾、それをかけるように願をかけて祈る神垣のしるしであろう姫百合も、開きはじめて磨きながら、馴れてまつわりつく手枕に、香りを残して浮名を立て、その橘のかげに宿るホトトギス、夜が明けて別れる愛の契りは本当に、末は永遠に空の雲の袖を引く人の多い菖蒲草のような優しい娘さん、殊にわけのある言の葉の語のつきないははこ草の母と子が枯れず、別れることのない栄えを我が庭に移し植え、さかり久しい我が家の撫子である。 |
補足 |
山田流箏曲。中歌曲。 『ほととぎす』と同型の前弾が付く。 撫子の花を中心に夏の花を並べた花尽し。 |