ジャンル |
地唄・箏曲 箏組歌 裏組 |
---|---|
別名 | [別名] 武蔵野の曲 [調弦] 平調子 [作曲] 八橋検校城談 |
作曲者 | 八橋検校城談 |
調弦 | 平調子 |
唄 |
一 雲の上の眺めは 在りし昔に変はらねど 見し玉垂の内ぞただ 懐かしやゆかしき 二 おもしろや五月雨 花橘の匂へり ほととぎす訪れて 短夜なれど寝られぬ 三 なかなかに始めより 馴れずば物を思はじ 忘れは草の名にあれど 偲ぶは人の面影 四 思ひ余り堰きかねて 恨み寝る夜の涙は 床凄まじや独りただ 枕に恋ぞ知らるる 五 武蔵野に行き暮れて 月を眺めて草枕 恋しき人を夢に見て うたた寝の袖絞る 六 檐を遶る点滴 ことの音にたとへて 七年の夜の雨 かつて知らぬ夢の世 |
訳詞 |
1.宮中の様子も空の眺めと同様、昔と少しも変わらないが、とりわけ昔見た御簾の内がただただ懐かしくはないか、もちろん知りたく思われる 2.何と面白いことか、五月雨に花橘が良い香りを放ち、ほととぎすも来て鳴いている。こんな趣のある夏の夜は短いけれど、とても眠ることが出来ない 3.いっそ始めから馴染みにならなかったら、かえって物思いをしなかったであろう。忘れたいと思っても忘れは草の名前で、私は忍ぶ草の方であるから、あの方の面影ばかりが偲ばれる 4.訪れて来ないあの人を恨みながら寝た夜は、思い余って、止めようとしても涙が止まらず、独り寝の床は寒々として、ただ枕にだけ私の恋を知られてしまった 5.武蔵野を行くうちに日が暮れたので、月を眺めながら草を束ねて枕としてまどろむと、夢に恋しい人が現れ、悲しさに涙が袖をしぼるほど溢れる 6.軒を伝って落ちてくる雨垂れの音は、まるで箏の音を聞くようである。都に仕えていた七年間には、このような夜の雨の情趣に気が付きもしなかった。まるで夢の世界のようだ |