ジャンル |
地唄・箏曲 手事物 |
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作曲者 | 三橋勾当 箏手付け:八重崎検校や峰崎勾当など |
作詞 | 松本一翁 |
調弦 |
三絃:低二上り-三下り-本調子-二上り 箏:低平調子-中空調子 |
唄 |
神風や、伊勢の神楽の学びして、 萩にはあらぬ笛竹の、音も催馬楽に、 吹き納めばや。 難波津のなにはづの、芦原に昇る朝日のもとに住む、 田蓑の鶴の声々を、琴の調べに聞きなして、 軒端に通ふ春風も、菜蕗や茗荷のめでたさに、 野守の宿の門松は、老ひたるままに若みどり、 世も麗らかになりにけり。 そもそも松の徳若に、万才祝ふ君が代は、 蓬が島もよそならず、秋津島てふ国の豊かさ。 |
訳詞 |
伊勢神宮の神前で奏するお神楽のまねをして、浜萩ではない竹で作った笛の音も冴え冴え、催馬楽様に吹奏して、祝い納めたいものである。 難波津の葦原に昇る朝日のもとで鳴く、田蓑の島の鶴の声々を琴の調べと聞きなして、軒端に吹き来る春風は菜蕗(富貴)や茗荷(冥加)という言葉に含まれているのでめでたい菜蕗組の調べのようであり、野守の家の門いn生えている松は、老松であるのに緑色の若芽を吹いており、世はうららかな春景色になった。 さて、年の初めに万歳が「徳若の御万才まで栄えませ」と戸毎に祝い歩く君が御代は、蓬莱山というめでたい島も、他所にあるものではなく、現在の御代を言っているのである。何とまあ、秋津島をいうわが国の富み栄えていることであろうか。 |
補足 |
大阪系地歌。二上り手事物。 正月の子の日の遊びの行事において引き抜く根曳の松にちなんで、初春の情景を様々に叙した内容。 手事は三箇所に入り、前弾がつく。前歌で伊勢の神楽や催馬楽などの古代の音楽を扱い、最初の手事で伊勢の太神楽を暗示。次いで摂津の田蓑島の鶴を叙して中の手事に続け、箏組歌『菜蕗』をもじった歌を経て最後の手事へ入る。 最後の手事はマクラ(楽の手)・手事二段からなり、巣籠地をあわせる。結びは正月の万歳から君が代を祝って終わる。 三絃の替手もあり、本手が三下りに転ずる中の手事には本調子の替手が合わされ、その打ち合わせ曲に富山清琴作曲『菊の寿』などがある。 |