ジャンル |
地唄・箏曲 箏組歌 中許(中組) |
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作曲者 | 三橋検校 |
調弦 | 半雲井調子 |
唄 |
一 いかなる筋と夕顔の 露の由縁の玉鬘 昔をかけて恋ひ渡る 縁をいかで浅からぬ 二 初音床しき鶯の 巣立ちし松の根を訪へば 谷の古巣の珍らしき 春の日影ぞのどけき 三 桜山吹とりどりに 花の籬に飛び違ふ 胡蝶の舞ははかなくも 飽かず暮れ行く景色かな 四 声はせで 身をのみ焦がす 蛍こそ 薄き一重の 情にて それかとばかり 忘られぬ面影ぞ床しき 五 咲き乱れたる籬の内に 床懐かしき撫子の もとの垣根を人知れず 心にかけて偲べり 六 篝火に立ち添ふ 恋の煙の世とともに 絶えぬ焔となりぬるは 行方も知らぬ思ひかな |
訳詞 |
1.如何なる筋かと調べてみると、露のようにはかない夕顔と縁のある玉鬘で、昔その母に恋をしたこと以来の浅くはかない因縁である 2.初音の便りを待っている母鶯が、子供の巣立っていった古巣の松の根をたずねると、谷の古巣を忘れないといわれるのが嬉しく、春の日差しものどかである 3.桜や山吹などとりどりの花の垣根を飛び交う蝶の舞い姿をはかなくも飽かずに眺めているうちに、いつのまにか春の日は暮れて行く景色である 4.鳴く声もしないで身だけを焦がす蛍のような恋心だが、その蛍を薄い一重の帷子に包んで玉鬘の姿を見せてくれた源氏の情はかえって辛いもので、思っていた人がそれかとばかりほのかに見てからは、いっそう忘れることが出来ない面影をなってますます恋しく思われる 5.柵の中で咲き乱れている、いつまでも懐かしい撫子のような玉鬘を見ると、その母の夕顔のことが人知れず恋しく偲ばれる 6.庭の篝火に立ち上る煙は恋の焔から出る煙で、いつまでも消えることのない焔となって、その行方もどうなるのか分からないほどの思いであるよ |