ジャンル |
地唄・箏曲 端唄物 |
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作曲者 | 広橋勾当・城菊 |
作詞 | 松卯 |
調弦 |
三絃:本調子-二上り |
唄 |
明けましてよい初春や松柏樹、彼の浦島が跡たれて、 八千代を祝ふ蓬莱の、松の位を移してん。 [合の手] 竹の園生も遠からぬ、雲井をここに土器の。 [合の手] 土も木も、我が大君のお流れを。 頂きますと手に早ふ、廻りかけたるささ機嫌、 嘘じやないかよほんだはら。 [合の手] かうして浮名たちばなの、色香になづけかしますと、 [合の手] 熨斗の附けたいどこやらを、ところがらとてよろ昆布、 あの餅花の柳さへ、それ春風が吹くわいな。 [合の手] 橙かさね伊勢海老の齢の腰のかがむまで、 変り給ふな変らじと、長きえにしを勝栗や、 古ことながら縁もよし、睦言のいつまでか。 [合の手] 尽きせぬ真砂限りなる、夜はほのぼのと日の脚も、 早山草に出でにけり。 |
訳詞 |
年が明けまして、よい初春を迎え、めでたい松柏の常緑樹を立て、彼の浦島のあとをうけて、八千代の栄を祝う蓬莱の松の位の太夫を移し授けてやりたい。 竹の園生の皇室も遠くなく、皇居をここに帰ることなくかわらけの、土や木も我が大君のお流れを頂きますと、手に取れば、早くも廻りかけた酒機嫌、浮名が立って橘の色香になづけて貸しますと、熨斗の附けたい、どこへやら、遊廓であるからよろこぶ昆布や餅花の柳まで春風が吹き撫でる。 橙重ね伊勢海老の年をとって腰のかがむまで変わりなさるな、変わるまいと、長い交りを勝ち取る勝栗を蓬莱台に飾る古例にならい。 縁もよいし睦言もいつまでも尽きず、真砂の数の限りなく、夜はほのぼのと日の脚も早くも山草にのぼり出て来た。 |
補足 |
本調子端唄物。 『歌曲時習考』に詞章初出。 蓬莱の飾り物を並べて廓の正月を歌う。 縁語・掛詞を多用。 「初弾」と称して、正月の弾き初めに用いられる。 |