ジャンル |
地唄・箏曲 手事物 |
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作曲者 | 松浦検校 箏手付け:八重崎検校 |
作詞 | 殿村平右衛門 |
調弦 |
三絃: 二上り - 三下り 箏: 平調子 - 六上り調子 - 平調子 - 中空調子 |
唄 |
一 梅の匂ひに、柳も靡く春風に、桃の弥生の花見てもどる、 ゆらりゆらりと夕霞、春の野がけに芹蓬。 摘みかけたる面白さ。 二 里の卯の花、田の面の早苗、色見えて、 茂る若葉の蔭訪ひゆけば、まだきに。 初音の山ほととぎす、一声に。 花の名残りも忘られて、家づとに語らばや。 三 草葉色づき、野菊も咲きて、、秋深み、 野辺の朝風露身にしみて、ちらりちらりと村時雨、 よしや濡るとも紅葉葉の、染めかけたる面白さ。 四 野辺の通ひ路人目も草も冬枯れて、 落葉しぐるる木枯しの風、峰の炭竃煙りも淋し、 降る雪に、野路も山路も白妙の、見渡したる面白さ。 |
訳詞 |
1.梅の花が香り、枝垂れ柳が春風に吹かれて細い枝をなびかせている。 三月になると桃の花が咲く。 それを見に行ってゆらりゆらりと帰ってくると、早や夕霞がたなびいている。 このような春の郊外の散策に、萌え出た芹や蓬を摘むのは大変面白い。 2.夏になると田舎には白い卯の花が咲き、田の面の早苗は薄緑の色を見せ始め、茂る若葉の蔭を行くと、季節にはまだ早いほととぎすの一声を聞き、花の名残りも忘れるぐらい嬉しかった。 家の土産に家人に語ることにしよう。 3.秋になると草の葉は色づき、野菊も咲き始める。 秋が深くなると野辺の朝風も葉末露も身にしみるようになる。 時にはちらちらと村時雨が降ってくるが、たとえ濡れても色増す紅葉の葉が見られるなら興味は深い。 4.冬になると野辺の通い路は、人の姿も見えないし草も枯れる。 木枯しが吹いて落葉が雨のように降りしきる。 山の峰の炭を焼くかまどの煙が独り淋しく立ち昇っている。 降る雪に野路も山路も白い布を敷いたように、真白になっているのは、何と面白い風景であろう。 |
補足 |
京風手事物。「松浦四つ物」の一つ。 春夏秋冬の風物を歌ったもので、夏と秋の間に手事が入り、各季の間にも短い合の手がある。 手事部はツナギ・手事・チラシの構成。夏の部にはホトトギスの声を暗示するような手が用いられ、三絃に特徴的な音程が多用される。 |