ジャンル |
地唄・箏曲 手事物 |
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作曲者 | 在原勾当 |
作詞 | 不詳 |
調弦 |
三絃: 低二上り ( 一メリ )- 一下り ( 三下り )- 本調子 - 高二上り 箏: 平調子 - 六上り調子 - 中空調子 - 二重中空調子 |
唄 |
去年の秋、散りし梢はもみぢして、いま、将峰に有明の、 月日ばかりを数へても、まつに甲斐なき村時雨、 時しも分かず降るからに、色も褪せつついつしかに、 わが袖のみや変るらん。鳴く音を添へてきりぎりす、 夜半の枕に告げわある、嵐の末の鐘の声、 結ばぬ夢も覚めやらで、ただしのばるる昔なりけり。 |
訳詞 | 木々の梢の葉が、みな枯れて落ちたのは、ほんの昨日のように思えたが、もう去年の秋のことになる。今年も木々の葉は紅葉している。 ああ、一年経つのは何と早いことであろう。それに、月は山の峰に何回となく沈み、太陽は昇っていった。 徒に月日ばかりを数えてみても、果してあの人は帰ってくるのやら、あてどもなく待っているのは、降ると思えば止み、止むと思えば降り出す村時雨に、晴れ間を待つようなものだ。 かくて恋しき人の心は変わってしまい、自分だけの片思いのまま、取り残されるのではあるまいか。 ふと、夜半、悲しさの忍び泣きに、こおろぎが鳴き音を添えてくれるとは、何と哀れな身の上であろう。 嵐が止んで静かになり、暁の寺の鐘が聞こえてくる。眠られないままに、うとうととまどろむ夢も覚めやらず、ただ、昔の思い出がしのばれるばかりである。 |
補足 |
大阪系二上り手事物。追善曲。 一周忌の追善曲として作曲されたものと推測されるが、在原行平が松風、村雨と別れた故事を歌ったものとも言う。 手事は二段からなって、前後にマクラ・チラシがつく。 大阪では「地物」の三絃合奏曲としても行なわれ、手事初段に「拾い地」、二段に、砧地を入れる他、初段に『湊川』の合の手を打ち合わせることもある。 |