ジャンル |
地唄・箏曲 手事物 |
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作曲者 | 菊岡検校(吉村検校?) 箏手付け:八重崎検校 |
作詞 | 橘遅日庵 |
調弦 |
三絃:本調子-二上り 箏:半雲井調子-平調子 |
唄 |
空艪押す水の煙りの一かたに、靡きもやらぬ川竹の、うきふし繁げき、 繁げき浮寝の泊り舟。よるよる身にぞ思ひ知る。 浪か涙か苫洩る露か、濡れにぞぬれしわが袖の、絞る思ひをおしつつみ、 流れ渡りに浮れて暮らす、心尽くしの楫枕。 さして行方の遠くとも、つひに寄る辺は岸の上の、松の根堅き契りをば、 せめて頼まん頼むは君に、心許して君が手に、繋ぎとめてよ、 千代よろづ代も。 |
訳詞 | 急がず気ままに漕ぐ舟の艪の、水煙のあがる彼方に靡きもせず一筋に進んでゆくように、遊里の女たちは、籠の鳥のような自由のない世界に、物憂い毎日を過ごしている。彼女たちは船の上で仮寝をしているのに似て、落ち着かないその日その日の辛さ侘しさは、この身にもひしひしと感じられてくる。波のしぶきか、わが涙か、または舟の屋根からもれて落ちた露か、自分の袖が悲しさの涙で絞るほど濡れているのに、日夜客を相手に浮れて憂い日に心を砕かねばならない。しかし、たとえ遠い将来であっても、是非この世界から逃れ出て、わが一生を頼むべき人と、浜辺の松の根のように堅い契りを結び、自分の心のすべてを君に捧げて、永く安らかな生活を送りたいものである。 |
補足 |
京風手事物。 遊女の儚い身の上を舟の旅寝にたとえ、頼む人に身請けされたいと願う心を歌ったもの。 手事は二段からなり、各段64拍子なので段合わせが可能。 |