ジャンル |
地唄・箏曲 山田流 |
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作曲者 | 初世山勢松韻 |
作詞 | 鍋島直大 |
調弦 |
箏:半雲井調子-四上り平調子 三絃:本調子-二上り |
唄 |
[前弾] 残るくまなくさはりなく、光り輝く朝日かげ、 加茂の川風のどかなる、都の春になりぬれば、 野山の草木おしなべて、 [合の手] 花咲きにけり白妙の、不二の高根もみぢの雲、 積りし雪の名残なく、 [合の手] とけて流るる河水の、行末広き難波潟、 浪路のどけき四方の海、よせくる舟のうちつどひ、 めぐみも深き大君の、豊かなる世に立ちかへり、 万代うたふ声ぞたえせぬ、 よろづようたふこゑぞたえせぬ。 |
訳詞 |
残る暗い影もなく、邪魔者もなく輝く朝日の光である。 加茂の川風がのんびりと吹き、都の春になれば野山の草木は一様に花が咲いている。 真白な不二の高根に秋ともなれば紅葉の雲がたなびき、積った雪は名残りなくとけて川水の行末の広い難波江である。 浪路はのどかな四方の海であって、寄せてくる舟は集ってくる。 恵みの深い大君の豊かである世に立ち返り、万代を寿ぎうたう声は絶えず聞える。 |
補足 |
山田流箏曲。奥手事物。 1890年の東京音楽学校の開校式に開曲された。 春の訪れに事寄せて、明治という新時代の発展を称えた内容。 作曲には櫛田栄清や長瀬勝男一の協力があったという。 典型的な手事物形式により、前弾・前歌・合の手・中歌・手事・後歌といった構成。 前弾には山田検校作曲の『あづまの花』の前弾を取り入れ、合の手に『深夜の月』の手事の一部を、また手事の終りのほうには『残月』などにある旋律という風に、古典曲の様々な類型旋律を借用しつつ、箏の手法もさまざまに盛り込んで基本的なパターンを示す。 山田流の曲であるが、この曲のみは三絃の駒は鉛駒(台広駒)を用いるのが通例。 |