ジャンル |
地唄・箏曲 山田流 |
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作曲者 | 四世山木千賀 |
調弦 |
箏:雲井調子 三絃:二上り-三下り-本調子 |
唄 |
[前弾] 庭のまがきに植ゑおける、菊の花こそ咲きにけれ、 いとめづらしの色香よな、春のあしたの桜花、 秋のゆふべのもみじ葉を、よそになしてはをかしさも、 あはれもこれにとぢむらむ、まことや雲井の御庭には、 天津星かとあやまたるるも、これ此花のさちならむ、 [合の手] さればめでたき菊の名の、あまたはあれど八千種の、 錦の中のまさり草、露おきそはる百夜草、 その長月の長かれと、限りなき世をちぎり草、 少女草てふ名もしるく、里の少女のさしかざし、 あゆめば袖に匂ふなり、草のあるじの翁草、 うつろふ色のむらさきも、なほめづらしき霜見草、 花のとぢめときくからに、くくり花とやいふならむ、 [合の手] 実にまさかりの秋の園、たかきいやしき中垣の、 へだておみえず白菊の、花には露の光さへ、 清らをそへて秋ごとの、友と千年をちぎらばや、 御代をや千代とちぎらばや。 |
訳詞 |
庭の垣根に植えておいた菊の花は咲いた。 本当に珍しい色香であるよ。 春の朝の桜花、秋の夕べの紅葉を除いては面白さも風趣もこれが最高であろう。 本当に禁中の御苑にこの花を見るときは天の星かと思われるのも菊の幸福の多いものといえよう。 それであろうから、結構な菊の名には沢山あるが、その多くの種類の中でも美麗な錦の花はまさり草であり、その上露にぬれた百夜草である。 その咲く頃は長月で長く命があれかしと、限りない世を契るちぎり草である。 乙女草という名もはっきりと、里の少女のかざしとしてさされる。 歩けば袖に匂うのである。 草の主人格の翁草と褪せた紫色も珍しい霜見草の二つの草は一年の花のとじめとして咲く花と聞くので、締めくくり花というのであろう。 本当に真っ盛りの秋の園、高低ある中垣の区別をつけず知らん顔の白菊は花に露の光までが清さを加えて、秋ごとに友と千年もと約束したいものである。 御代とも千年と約束したいものであるよ。 |
補足 |
山田流箏曲。 延命長寿の草なる菊について、菊尽し歌としてうたったもの。 |