ジャンル |
地唄・箏曲 山田流 |
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作曲者 | 山田検校 |
唄 |
それつみ深き女の身あるが中にも川竹の、 ひと夜ひと夜のあだ枕、ほんにしみじみ憂や辛や、 とはいふもののある時は、思ふ男に思はれて、 とけてあふ夜のうれしさは、なににたとへん言の葉の、 かたり尽きずつひきぬぎぬの別れじや、 アアあすの日の暮れをまつちの神かけて、 変らぬ色の深緑、ふかき契のなかなかに、 しげき人目にへだてられ、あhでもどした心のうちを、 君ならずして誰か知る、はかなやままにならぬ身を、 思ひつづけてひとりねの、あけ行く空もはしたなく、 なくね血をはくほととぎす、月の桂の葉がくれか。 |
訳詞 |
それ罪深い女の身であるが、中でも遊女は一夜一夜の儚い添い臥し、本当にしみじみと憂くもあり、辛くもあるとは言うけれど、ある時は恋しく思う男に思われて、しんみり逢う夜の嬉しさは何に例えたらよろしいやら、話は尽きずつい翌朝の別れになってしまい、明日の日の暮れを待つということになる。 待乳山の神に願をかけて変らない色の深い緑、深い契りの中睦ましさは却って仇となって、多くの人目が隔てとなって、せっかく来たのに逢わずにもどした心の中をあなたでなくて誰が知ろうか。 情けないことよ、思いのままにならない身を思い続けて、独り寝の明け行く空は無情なものであるよ。 なく音血を吐くホトトギスのように月の桂の葉にかくれる我が身であるか。 |
補足 |
山田流箏曲。 メリヤス物とも。 現在は廃曲であるが、式亭三馬の『浮世風呂』中に流行曲としての記録があることで有名。 『吾嬬箏譜』に詞章が収録されている。 |