ジャンル |
地唄・箏曲 手事物 |
---|---|
作曲者 | 岸野次郎三 |
作詞 | 大石うき? |
調弦 | 三絃:本調子 |
唄 |
松の枝には雛鶴巣立つ。 [合の手] 谷の流れに亀遊ぶ。 [合の手] ながれに谷の、谷の流れに亀遊ぶ。 [合の手] 沖の石とは。愚かの沙汰よ、 [合の手] 乾く間もなき袖の海。 [手事] 恋ひ暮し恋ひ明かし。 [合の手] 松に時雨は真葛が原に恨みしに。 [合の手] 今はな、うれしや。 [合の手] なびき逢ふ夜の、 飽かぬ契りは千代も変らじ。 |
訳詞 |
松の枝には雛鶴が巣立って飛び、谷の流れに亀が遊ぶ。 沖の石とは馬鹿げたことよ。 人には思われないで、自分ひとりが乾く間もなく、袖に涙を流して海をなし、恋い暮し恋い明かすのである。 訪れを待つ松に時雨が染めないように、片思いをするのは真葛が原と恨めしく思ったものだが、今は睦まじくなって夫婦の縁を結んで嬉しいことよ。 靡き逢う夜の飽きない約束は幾千代までも変らないであろう。 |
補足 |
本調子長歌物。手事物。 曲題は手事が六段からなることと、恋慕の情を歌った内容に由来するらしいが、あるいは恋慕物の類に共通するパターンを有することにも起因するか。 寛延期以降の歌本類に詞章が収録され『今古集成新歌袋』において『六段すががき』などとともに初めて手事物と分類されるにいたった。 京都の箏の手付けは作曲者不詳のものと、浦崎検校作曲の二種があった。 三絃替手は光崎検校作曲(二上り)と、富士岡検校作曲(本調子)という。 手事の最初の旋律は、歌舞伎下座の『恋慕合方』を経て、長歌『秋の色種』の前弾に取り入れられる。 |