ジャンル |
地唄・箏曲 箏組歌 中許(中組) |
---|---|
作曲者 | 北島検校 |
調弦 | 平調子 |
唄 |
一 末の松山波越すとも 変らぬ色は松が枝に 君が千歳の限りなき 汀の池に亀遊ぶ 二 身に沁みわたる秋の頃 月も隈なき閨の戸に 帰るさ告ぐる鶏の 末だきに鳴くぞ恨しき 三 なかなかに今はただ 思ひ絶えなんとばかりを 人伝ならで言ふ由も あらで焦がるる身ぞ辛き 四 信夫山信夫山 あはれ忍ぶの道もがな 人の心の奥までも 見でや已みなん我が思ひ 五 小夜千鳥夜もすがら 鳴くは我を訪ふやらん 須磨の住居の物憂きに 涙を添ゆる声々 六 契りきな 互に袖を 絞りつつ 末の松山 波越さじとは いかに言ひけん 徒になりし恨かや |
訳詞 |
1.万が一、末の松山を波が越えることがあっても、松の緑は変らないように、君が代も限りなく、池のほとりには万年の齢を持つ亀が遊んでいる 2.寒さが身に沁みわたる秋の頃、月が皎々と照る寝室に、早鳴きの鶏が帰る時を告げるが、まったく恨めしいことだ 3.いっそのこと今はただ物思いのため命が絶えてしまいそうだとだけでも人伝でなく直接に言ってやりたいのだが、その方法すらなく、心を思い悩ますこの身は何と辛いことだ 4.奥州の信夫山の名前ではないが、人目を忍ぶ道でもあったらなぁ。その道を通ってあの人の心の奥を見ずしてはやむことのない私の思いである 5.夜通し鳴く千鳥は私を慰めるために訪れてきているのだろうが、ただでさえこの須磨の侘び住居はもの悲しいのに、そんな千鳥の鳴き声は、いっそう都が思い出されて涙を誘う声である 6.元輔はどんな気持ちでこのような歌を詠んだのだろうか。約束が仇になってしまった恨み言であろうか(「契りきなかたみに袖を絞りつつ 末の松山波越さじとは『後拾遺集』清原元輔」:お互いに涙に濡らした袖を絞りながら約束したことであったよな、末の松山を波が越すようなことがありえないように、決して心変わりしまいと) |