ジャンル |
地唄・箏曲 箏組歌 奥許 |
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作曲者 | 住山検校?倉橋検校? |
調弦 | 平調子(ただし一は五の乙) |
唄 |
一 水の上の泡沫 露に宿る稲妻 在るか無きかの世の中を 宇治川の橋姫 二 身の憂き時は立ち寄らん 蔭と頼みし椎が本 空しき里となりにけり 契りの程ぞ悲しき 三 峰に生ふる早蕨 昔の花の面影 忘れがたみに摘み置きて 主なき宿に贈らん 四 前の世の契りか 比の世のうちの情けか 空しき後と宇治の里 絶えずここに宿り木 五 一方ならぬ物思ひ 寄る辺定めぬ浮舟 徒なる名のみ橘の 小島が崎に焦がるる 六 小野の花の秋のころ 閨の端の紅梅 それかと紛ふ花園 昔の人ぞ恋しき |
訳詞 |
1.水の上の泡や露に宿る稲妻のように、あるかないかのはかない世の中に、宇治川の橋姫たちが住んでいる 2.身に迷いの生じたときは立ち寄って頼みにしようと思っていた椎の木陰のような八の宮が亡くなり、むなしい里となってしまった。出家したら師と仰ぐ約束も今は悲しいものになった 3.峰に生えた初蕨を、昔花のように美しかった大君の面影を忘れ形見として籠に摘み入れ、今は主もいない宿に贈ろう 4.前世の因縁か、現世の愛情か、愛しい人は逝ってしまったあとも、この宇治の里によく宿りにきたものである 5.二人の愛にはさまれて悩みつつ、拠り所なく漂う浮舟のように、浮名だけ立ったのは、小島が崎において身を焦がしてからある 6.小野の里の秋の花や、閨の片隅に咲く紅梅を眺めていると、ありし昔の花園のような気がし、薫の君や匂宮たちのことがなつかしく思われる |