ジャンル |
地唄・箏曲 箏組歌 奥許 |
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作曲者 | [雲井の曲] 八橋検校 [雲井の曲 巾の調] 不詳 |
調弦 |
[雲井の曲] 本雲井調子 [雲井の曲 巾の調] 巾上り雲井調子 (巾は九の乙) |
唄 |
[雲井の曲] 一 人目忍ぶの仲なれば 思ひは胸に陸奥の 千賀の塩竈名のみにて 隔てて身をぞ焦がるる 二 忘るるや忘らるる 我が身の上は思はれで 徒名立つ憂き人の 末の世いかがあるべき 三 たまさかに逢ふとても なほ濡れ増さる袂かな 明日の別れも予てより 思ふ涙の先立ちて 四 雨のうちのつれづれ 昔を思ふ折から あはれを添へて草の扉を 叩くや松の小夜風 五 身は浮き舟の楫緒絶え 寄る辺もさらに荒磯の 岩打つ波の音につれて 千々に砕くる心かな [雲井の曲 巾の調](楽) 六 雲井に響く鳴神も 落つれば落つる世の慣らひ さりとては我が恋の などかは叶はざるべき |
訳詞 |
1.ひそかに恋をしている仲であるが、思いは胸いっぱいに満ち、陸奥の千賀の塩竃は近いというけれど、名前ばかりで、都を遠く隔てて、逢われぬ思いに身を焦がすばかりだ 2.私のことを忘れたのか。あなたに忘れられた我が身のことは気にならないが、浮名を立てて私を苦しめているあなたが、その罪によって行く末がどうなるのかと気掛かりである 3.たまに逢うことがあっても、いっそう悲しい思いになって涙に袂が濡れ増さる。明日になれば別れなければならないのが前から分かっているので、涙が先立って流れるために 4.雨の夜の所在無さに昔のことをあれこれ考えていると、庵室の草の戸を松風が叩いて、一層哀れを添える 5.楫を失ってさまよう浮き舟のように身を寄せるところも全くなく、荒磯の岩に打ち付ける波が音を立てて砕けるように、私の心も粉々に打ち砕かれるようだ 6.空に鳴り響く雷でも落ちることがあるのだから、私の恋も手中に落ちて叶わないはずがない |