ジャンル |
地唄・箏曲 明治新曲 |
---|---|
作曲者 | 菊武祥庭 |
作詞 | 文部省国定小学校教科書より |
調弦 |
箏高音:一下り雲井巾一調子 箏中音:一下り中空調子 箏低音:平調子 |
唄 |
鞍馬の寺の稚児桜、咲けや四海にかほるまで。 昼は読経につとむれど、暮るれば習ふ大刀つるぎ、 思ふ源氏の再興を、天満宮に祈らんと、 夜ごとに渡る五条橋。 笛の音高く夜は静か、思ひもよらずかたへより、 出でてさへぎる大法師。 太刀を賜へと呼ばはれて、太刀欲しくばよりてとれ。 さらば取らんと打振ふ、薙刀遂に落されて、 今ぞひたすら降参と、誠あらはす武蔵坊、 さては汝が弁慶か、牛若丸にましますか。 主従の契り深かりき。 鏡は清し、加茂の水。 |
訳詞 |
鞍馬の山の稚児であった牛若丸が成人して義経となる話は、いつまでも世の語り草ともなる雄々しい物語である。 牛若丸は昼は仏典を読み、学問をするが、夜になると武芸に勤しんだ。 夜毎に下山して、五条の天満宮に我が家源家再興を祈願していたが、この夜も牛若丸は静かな夜空に、高らかに笛を吹いて五条橋に差し掛かると、思いもかけないところから、行く手を遮って大きな法師が現れ、太刀を貰いたいという。 (牛若丸)太刀欲しければ腕づくで取ってゆけ。 (大法師)さらば腕で取ってみせる。 と、薙刀で打ってかかったが、牛若丸に薙刀を打ち落とされ、ただただ降参の精神を表し、武蔵坊弁慶と名乗ると、汝が武蔵坊か、われこそ牛若丸であるといって、ここで主従の誓いをし、その契りは終生堅かった。実に主従の手本といってよく、五条の橋の下を流れる加茂川の水のように清い物語である。 |
補足 |
手事物形式による明治新曲。 1911年作曲。 大阪では菊田八重一の補作や菊田歌雄との合議改作もあったとされ、箏三部合奏として現行。名古屋系では本手と地の二部合奏。 |