ジャンル |
地唄・箏曲 山田流 |
---|---|
作曲者 | 山田検校 |
調弦 |
箏:雲井調子 三絃:三下り |
唄 |
[前弾] うつればぞ、花のかがみに我姿、 うつる心はまことのかげよ、おぼろ月夜のわたどのに、 人待つかげは誰やらむ、うはの空吹く花の香は、 こちへ届かぬかいま見の、人目せきぢのへだてはいやよ、 せめて田の面の雁の文、おくるその日の辻占うらに、 人来ひとくの初音もうれし、向ふ鏡のかほよどり、 変らぬ契りかたからめ、君が代のめぐみも深き池水に、 住める蛙も祝ひうた、歌にやわらぐ人心、 賤もたときもおしなべて、花の鏡の曇りなき、 春や久しき春ぞ久しき。 |
訳詞 |
映るからして、花の鏡に映る自分の姿も、映った心も本当のかげであるよ。 朧月夜の廊下に人を待っている影は誰であるか。 天の上を吹く花の香はこちらへは届かず、垣の隙からのぞき見も人目が関になってへだてられるのはいやであるよ。 せめて田圃の雁の手紙を送って、その返事を辻占に聞けば、思う人は来るという初音を聞くだけでも嬉しい。 向こう鏡に映る美しい顔の鳥よ、交わす契りは変らず堅くあろう。 君の御代の恵の深い池水に住む蛙も祝ってうたう歌に和らぐ人心、賤しい者も貴い者もおしなべて、花の鏡は曇りなく永遠に平和な春は続くのである。 |
補足 |
山田流箏曲。 「年をへて花の鏡となる水は散りかかるをやくもるといふらん(古今和歌集・伊勢大輔)」 からとった。 男女の情愛をうたい、御代のめでたさを祝った歌。 |