ジャンル |
地唄・箏曲 新組歌 |
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作曲者 | 吉沢検校 箏替手と手事:松坂春栄 |
作詞 | 古今和歌集 秋の部 より |
調弦 | 古今調子 |
唄 |
一 きのふこそ 早苗とりしか いつのまに 稲葉そよびて 秋風のふく 二 久方の 天の河原の 渡守 君渡りしなば 楫かくしてよ 三 月みれば ちぢいものこそ かなしけれ わが身ひとつの 秋にはあらねど 四 山里は 秋こそことに わびしけれ 鹿の鳴く音に 目をさましつつ 五 散らねども かねてぞ惜しき もみぢ葉は 今は限りの 色とみつれば 六 秋風の ふきあげにたてる 白菊は 花かあらぬか 浪のよするか |
訳詞 |
1.『古今和歌集 秋の部 詠人しらず』 田植えをしたのが、つい昨日のように思っていたのだが、いつの間にかもう稲の穂が秋風にそよぐ季節になってしまった。月日のたつのは本当に早いものだ。 2.『古今和歌集 秋の部 詠人しらず』 天の川の渡し守さん。彦星が渡ってしまったら、舟の棹を隠してくださいね。 3.『古今和歌集 秋の部 大江千里』 秋といものは、わが身ばかりの秋ではなく、だれにも同じように訪れてくるものではあるが、それが月を眺めていると、あれこれと限りなく心細く悲しくなってくるものだ。 4.『古今和歌集 秋の部 壬生忠岺』 山里はいつも寂しくてつらいところだが、とりわけ秋はわびしく、よく鹿の鳴く声に目をさますときがある。 5.『古今和歌集 秋の部 詠人しらず』 散ってはいないが、散らないさきから惜しくてたまらないあの紅葉の葉は、今が最上の美しい色合いだ、これを過ぎると散っていくのだ。 6.『古今和歌集 秋の部 菅原道真』 秋風が吹いている吹上の浜に吹いている白菊は、真白な花であるのか、いやいやそうではなく、浜辺に打ちよせる白波であるのか。 |
補足 |
新組歌。古今組の一つ。 初秋から晩秋にかけて六歌に配列して組歌としたもの。必ずしも古典的な組歌の形式に従わない。松坂春栄によって替手と手事が補作されて以来、手事物箏曲として有名になった。 第四歌の後、合の手を導入するマクラ・手事二段・チラシ。チラシから後に替手が入る。 |